体当たり台湾ホームステイ

台湾にホームステイに行った人の話を聞いた。


彼女Bさんは友人の台湾女性の家にステイしたのだが、ホストとは英語でコミュニケーションを取っていた間柄。
でも家族はきっと英語は話せないだろう。
台湾語の物語CDを、なんども聞いて真似して、意味をさぐることはあまりせずに、まわりのヒッポメンバーと音の面白さで遊んで出かけていった。


まぁ、予想外のことが起こるのがホームステイというものである。

友人や家族が仕事などで出かける昼間、Bさんはベトナム人のお手伝いさんと、ホストの1才3ヶ月になる娘さんの3人で家に残されることになった。

このベトナム人のお手伝いさん、英語が通じない。
そして台湾語もわからない。
中国語はできるのだけれど、Bさんは中国語がわからない。
じゃあ漢字で筆談は?
と思ったら、お手伝いさん、中国語は話せるけれど漢字の読み書きはできない様子。

こうなったら、残されているのはジェスチャーと言われていることを真似するしかない。


かくして、Bさんのサバイバル生活がスタートした。


状況とジェスチャーで大まかにはわかる。
しかし、食べたいものを伝えたつもりが、違うものが出てくる。
隣では1才3ヶ月が、ちゃんと食べたいものを要求して食べている。

が〜ん!
1才3ヶ月以下?


1人で街に買物に行きたいと思っても、
ベトナム人お手伝いさんは許してくれない。
「お前、そんなに何もわからないのに、1人でなんて行けるわけがないだろう!」
というわけだ。

言っておくが、Bさんは英語がペラペラだ。
漢字ももちろんわかるし、旅行だって慣れているから、街に出れば1人で買物くらいできる。

しかし、お手伝いさんは認めてくれない。
何かあったら自分の責任になる、というのもあったのだろう。

そこでBさんは、ホストに電話をして状況を説明し、ホストからお手伝いさんに大丈夫だからということを言ってもらって、やっと買物に出ることができた。


まさしく体当たりホームステイである。



話を聞いて、私は感動をした。

大のおとなが、中国語で1才3ヶ月に負けながらも、全力でこのベトナム人お手伝いさんとのコミュニケーションを取ろうとした、その姿勢に、だ。

もちろん、Bさんにしたら、それ以外に方法がなかったのかもしれないが、自分から歩み寄っていくということが、大人になるとなかなか難しい。
ついつい引いてしまったり、英語ができる人なら相手が「国際語」である英語を話せないことに責任を転化してしまいがちだ。

しかしBさんは、そうしなかった。
その状況を丸ごと受け入れて、その家の運命(ちょっと大げさだけど)を生きた。
きっと赤ちゃんって、こうなんだろう。
その状況を受け入れて、全力で生きるしか選択肢はないんだ。



人生に同じものがないように、ホームステイの話は、どれ1つとっても同じものがない。
そこには、向こうの家族と一緒に生きた人生があるからだろう。