「ことば」とは何か?
来週のワークショップに向けて、「ことばで世界を見つける人間の営み」について考えている。
人間だけが、ことばを話す。
こう言うと、
「いや、うちの犬はちゃんとことばを理解している」
という人もいるだろう。
- 作者: 理化学研究所脳科学総合研究センター
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/10/19
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岡ノ谷一夫氏(生物言語研究チームリーダー)
ここで、岡ノ谷氏は「ことば」と「コミュニケーション」の違いを説明し、動物のそれはコミュニケーションであるという。
少し長くなるが、引用しよう
ことばとコミュニケーションは同じものではない。ことばの機能の一部はコミュニケーションを含むが、ことばの大切な機能はそれに限定されない。これを同じに扱ってしまうと、せっかく「ことば」という用語を準備した意味がなくなってしまう。
ではことばとは何か。ここで簡単な定義をしておこう。ことばとは、「象徴機能をもつ記号(単語)を、限定された順番(文法)で結合して、森羅万象との対応をつけるシステム」のことを言う。すなわち、ことばは意味(すなわち象徴機能)をもつ単語でできていて、この単語を文法(決められた順番)にのっとって組み合わせることで、さらに広い範囲の意味と対応をつけるだけでなく、新たな、これまでに一度も使われたことのなかったような意味をも創り出してしまうようなシステムである。これらの条件をすべて満たすもの、そしてそれだけをことばと呼ぼう。すると、「ことば」とは、現在わかっている範囲では、人間のことば以外にあり得ないのだ。
(中略)
チンパンジーの実験では、「個別の意味との対応をもつ有限の構成要素(数十から数百)」を学習することは可能であっても、「それらを並び替えることで森羅万象との対応づけを可能にする」ことは不可能だった。
ほとんどの場合、チンパンジーが伝え得ることは、実験者によって解決することが可能な、チンパンジーがもっている何らかの欲望のみであった。もちろんそれでも十分面白い研究だと言えるが、チンパンジーたちは決して「夕日がきれいだな」、「昨日は寒かったな」などとは言わない。直近の要求の伝達は可能であっても、過去・未来の要求や、たんなる記述や、架空の事項を作ることや、空想にふけることはできない、ということだ。
人間は、ことばで他人とつながっていく。
それも、相手の過去や未来とも。
ともに過ごさなかった時間を、共有することができる。
それは、
大げさに言うなら、相手の人生をもらう、ということなのだ。
ワークショップまでに、さまざまな研究からヒントをもらって、練り直さなければならない。
岡ノ谷一夫氏の研究については、こちらをご覧下さい。
NEC ビジネス情報サイト Wisdom
− 第5回 −
人間だけが言語をもっていることの不思議
PART1:小鳥の歌がヒントをくれた言語の起源の謎 (2006年4月10日掲載)