第1回 ここで話せるようになる?

Ciao! Cynthiaです。お待たせしました! いよいよ新連載『大人だって多言語の赤ちゃんになれる!・・・ってマジで?』のスタート!

私たち hippo family club では、「多言語の自然習得」というものをしてます。
8文字中7文字が漢字(!)というこのお堅いフレーズに似合わず、実際やってるコトといえば、CDを流し(いわゆる語学の先生のチェックが入れば、「聞く」という範疇には入りそうにないような聞き方で)、週に1回から人によっては数回集まって、ひたすらその音を声に出してまねる! と、まぁこんなもんですよね。


最近hippoに入った人の中には、みんなが話しているのを見て「私も話せるようになるかも?」と思ったものの、ただ流してるだけじゃナカナカみんなのようにスラスラと覚えられなくって、「これで話せるようになるのかなぁ?」って人もいるかもね。

でも、私は元々「ここで話せるようになる!」なーんて思って入ってないんです。

おどろいた? だって私が入った当時は、ペラペラ話せる人なんて全国でも数えるほどだったんじゃないのかなぁ。
じゃあ、なんで入ったかって?

それはね、講演会を聞いて、子どもがことばを獲得していくプロセスは、まさしく「そのとーり!!」と思ったから。いわゆる自然の道筋ってやつですね。

私はそのころ、外国人相手の日本語教師をしていて「語学習得のプロセス」にとーっても興味があったし、娘が3才で、それまでの日本語を話していくプロセスを見ていても、語学教育(日本語学校)と母語の習得(子どもの日本語)は、「ぜんぜん違う!」って思ってたんだよね。

で、この自然習得ってやつを、大人の私もできるのか(しかもこの人工的な環境で)、試してみたいって考えたわけ。
だから、こう言っちゃなんだけど、最初から大きな期待はしてなかった。でも試してみるわけだから、やることはやる(つまり、聞くとかまねるとか、歌うとか、言われることは何でも)っていう心構えではいました。

そうしてhippoに入った私。
まず何をしたかというと、とにかくhippoのカセットテープ(時代を感じるなぁ)を聞きました。BGMのように!ということだったから意味とか考えずに、暇があれば流してた。

それもカバジンや、ソノコの7ヵ国語エディションなど、かければ3ヵ国語以上が自動的に流れるもの。だって多言語の秘密を探りたいわけですからね。
家ではオートリバースのラジカセ、通勤電車ではウォークマン(なつかし〜 今で言うi-podみたいなもんです)。
充電するのを忘れたり、テープを入れて出るのを忘れた日には、「ガ〜ン 今日1日聞けないよ〜」って感じだった。

だからってそんなにガンバって聞いてたわけじゃないよ。当時私はめちゃめちゃ忙しかったので、通勤の満員電車の中ではウォークマンしてるものの、頭の中はその日の仕事の段取りとか考えてて、全然ちゃんと聞いてなかったんだよね。

でもある日、京橋にある日本語学校に向かう途中で、急に目の前に牧場の風景が浮かんできた。もちろん京橋の駅前に牧場があるわけないから、テープがその場面の音を流してたんだよね。その瞬間「あっ、私、このことばわかる!」って思ったんだ。
嬉しくなってよく聞いてみたら、なんとそれは日本語でした。ま、笑い話なんだけど、そのとき意味がわかるって音で映像が浮かんでくることなんだって気づいたんだよね。

それまでは、ことばがわかるって【外国語→日本語】に変換できることだと思ってた。でもそれなら日本語がわかるってどういうこと?
日本語って変換できることばがないじゃん。
私たちってどうやって日本語がわかってるの?

そうだ!こういうときは赤ちゃんに聞いてみよう!自然習得の大先生は赤ちゃんなのです。

 というわけで、ここでサーちゃん(2才)に登場してもらいましょ〜 バチバチ
ある日サーちゃんは、ママに連れられて歯医者さんに行きました。ヨイショと階段を上っていくと目の前に歯医者さんのドア。でも中は真っ暗です。
「あ〜お休みやわ。歯医者さん、今日お休みやから帰ろうか。」とママ。
帰り道、ママは、サーちゃんが「おやすみ、おやすみ」と何度も口にしていることに気づきます。
「どうしたんだろう、この子? ははぁん、おやすみっていうことばをゲットしたのね。」
そうです、2才くらいのことばを覚え始めた子達って、ゲットしたことばを何度も何度も使いたがるんですよね。

案の定、サーちゃんは家に帰ってからもおもちゃで遊びながら「おやすみ、おやすみ」と口ずさんでいました。でも、夜になって布団を敷いているときに、ママはハッと気づいたのです。
「おやすみは、今日ゲットしたことばじゃない!毎日毎日寝る前にはいつも言ってることば。この子だって何百回も言ってたはずだ。」
 でもサーちゃんにとっての「おやすみ」という音は、きっとお布団の上にゴロンとしたときの風景とセットになっていたのでしょう。今日はちょっと違う風景の中で聞こえてきた「おやすみ」。2才のサーちゃんには、どんなふうに聞こえたのでしょうか。

日本語の「おやすみ」ということばにはいろいろな意味(使われ方)があります。サーちゃんがそれをどうやって使い分けるようになるのか、ママは観察することにしました。

 歯医者さんから1週間くらい経ったある日、サーちゃんの家族はみんなで海遊館に行きました。そのあと、隣のレストランで食事を終えて出ると、外は暗くなっていて海遊館はもう閉まっていました。そのときタイルばりの壁に描かれた魚を見たサーちゃんが「おさかな、おやすみ?」と聞いたのです。
これは「おさかなはもう寝ちゃったの?」とも「海遊館はもう閉まったの?」ともとれますよね。
でも「海遊館はおやすみです」と大人が言うときには、休館日には使えますが、閉館後には使えません。(いやはや日本語も難しいです)
 サーちゃんの「おさかな、おやすみ」は、当たらずといえども遠からずといったところでしょうか。

 そしてまた1ヵ月後、日曜で家にいるお姉ちゃんを見てサーちゃんは言いました。「ねえね、がっこーおやすみ?」 これはもうバッチリ。完璧に使えています。
 もちろん、サーちゃんの頭の中はわかりませんが、「おやすみ」という音にいろんな風景が重なっていって、自然に使えるようになったのでしょう。


はい、ありがとうございました。子ども達ってこんなふうに日本語を見つけていってるんだね。
そういえば私もhippoのCD聞いてて、「あれ、このことば、ここにも出てきた。なんで?」って思うこと、あるある!
大人だから、つい日本語でこうかなとか考えちゃうんだけど、そう思ってると全然違う場面で出てきたりしてビックリするんだ。
でも、いろんな場面が重なると、日本語にはできないニュアンスっていうのがわかってくる。

あと、わかってないけど、周りの人が言ってるのをまねして使ってるのもあるかな。(笑)
イタリアでもホストのアッレやタチアナの真似をしてしゃべってたもんね、私。
例えば「ダーイ」っていうことば。
前の車がトロトロ走ってるとき、後ろから「ダーイ、ダーイ」ってよく言ってた。
CDにも出てくるから聞いてみてね。コンバインの場面の最後。

他にも「マダーイ」っていう言い方もあるんだけど、これはちょっと使いどころが違うみたい。意味はよくわからないんだけど、使いどころは「ココだ!」って思う瞬間があって、そういうときに私が「マダーイ」って言うと、ものすごくウケるわけ。

外国にホームステイに行くと、何か別の習得方法があるような気がするけど、実際はやっぱり聞いて真似して、どんどん使う。
ま、はずすこともあるけど(笑)、使ってるうちにだんだんわかってくるしね。
とにかく丸ごと真似してたら、発音も文法も間違えようないわけですよ。

   では、次回もお楽しみに!Salut!