選ばない

例えば同じ国に1週間行ったとしても、旅行とホームステイでは見てきているものが随分と違う。
その違いはなんなんだろう?

どちらにも良さはあるけれど、決定的に違う気がするのだ。


もちろんホームステイ中だって観光地を訪れたりもするし、旅行中だって現地の人々とのふれあいはできる。
私が思うに、ホームステイと旅行の違いは、「選ばない」もしくは「選べない」ということではないか。
そう聞くと、「なんと不自由な」と思われるかもしれない。
けれど、それこそがホームステイの醍醐味なのだ。


旅行だったら、ホテルが気に入らなければ変えればいい。
料理だって自分の好みに合わせて注文できる。

でもホームステイではそうはいかない。
ホストやゲストが気に入らないからといって、ホストチェンジを「返品交換」のように無感情にすませることはできない。


ホームステイというのは、基本的には「異文化を丸ごと受け入れる」ということなのだ。
それは受け入れる側(ホスト側)にとっても同じである。
そこにはいろんな葛藤もおきる。
しかしその葛藤こそが、日常の中では決して気づきえなかった自分の意外な一面を見せてくれる。
自分自身の価値観が、実はたいそう偏っていたことに気づかされ愕然とする。


そんなふうに固定観念が崩されたあとには、
「まぁ、それもアリか・・・」と受け入れて、
今までとは何かが変わった自分が存在する。


「選ばない」がゆえに、自分の許容範囲を超えたものにも向き合わざるをえないし、そこに向き合うからこそ、今の自分にはないものを得ることができる。



多文化にふれることは、さまざまな視点を自分のものにすることだ。
いろいろな角度から物事をみることができるというのは、人にとって幸福に生きるための1つのヒントかもしれない。