第5回 文字も大波から 

スラマシアン!シンシアです。
前回から少し日があいてしまいましたが、研究レポートです。

前回は、大波で話す ということについてレポートしました。歌うだけではなく、「話す」のも大波で、というわけです。
ことばのメロディの中に、構文も文法も含まれているということを書きました。思い出してもらえたかな?
今回のテーマは、文字も大波から

みなさんの周りにいる小さな子たち、もしくはご自分のお子さんがまだ幼稚園に入る前くらいの頃、文字の読み書きはどんなふうにしはじめた?
名前の中の一文字っていう人、多いよね。
あとは「の」とか。

そうそう「字」の前に「字のようなもの」でお手紙を書いてくれる子もいる。
グルグルした小さなかたまりを並べていたのが、そのうちに直線の組み合わせになって、なんとなく字っぽくなっていったりして。(笑)

ひらがなは一文字ずつわかるけど、カタカナは単語のかたまりで認識してる子も結構多いみたいなんだよね。
「マ」だけだとわからないけど、「マヨネーズのマ」と言われると書けるとかね。


私もロシア語のキリル文字がそうだった。

ある時、ロシアにホームステイに行くのに調査表というのをロシア語で書かなきゃいけなくなったんだけど、ロシア語なんて全然勉強したこともないし、もちろん教科書だって持ってないし、 「どうする。私?」ってなったのね。

で、まぁヒッポの物語CDのロシア語は歌っていたから、とりあえずそのテキスト(セリフのスクリプト)を開いてみたの。

そこには、なんだかわからないアルファベットが並んでいた。
ふつうのアルファベットと同じ字もあるけど、左右反転させたようなのもあるし、見たことない記号みたいなのもあったり、数字の3みたいなのもあったり。
眺めてみてもよくわからなかったけど、まぁ多分この辺りだろうと見当をつけて書き写して調査表は提出。

しばらくすると、今度はロシアからもホスト家族になってくれる人達の調査表が届いた!
しかもロシア語オンリーで。(汗)

可愛い女の子とお母さんらしき人の写真。そしてロシア語で何やらかかれたメッセージ。
何とかして読みたいじゃないですか、その全然わからないロシア語を。

そう思いながらじっと眺めていると、同じ形のかたまりがいくつかあるのね。
それはPで始まって間にCとかKとかが入っていた。何だろうこの単語。
考えながら見つめてると、ある音がふっと浮かんできた。
「ルースキー」
そうだ!きっとこのことばは「ルースキー」に違いない。絶対そうだ!

そうすると不思議なことに、自分が音を知っている単語は、そこだけ文字が浮き上がるかのように読めていった。
少し読めると、あとはパズルのように面白く解けていった。

こないだ神戸のフェロウに聞いたんだけど、彼女の息子さんのY君は、高校で韓国語を第二外国語として選択してるんだって。
Y君はもちろん韓国語を勉強したことはなかったけど、CDはとにかくよく歌っていて、人間ジュークボックス(古い!)みたいにするする音の出てくる子なのね。

で、そのY君、学校で韓国語を習ってハングルが少し読めるようになると、カラダの中に韓国語の音があるから、あっという間にスラスラ韓国語の文章が読めるようになっちゃったんだそうです。
音が先にあるから文字が読めるっていう当たり前のことを忘れちゃいけない。
文字が読めて話せるんじゃなくって、話せるから字も読めるんだよ。


もう1つ面白い話。
メキシコに留学に行ったMちゃん。

交換留学なので、現地の高校で「勉強」をしなきゃなりません。
当然、宿題なんかもあるわけです。

その宿題の中に、スペイン語で書かれたプリントを要約するというのがよくあって、最初は辞書で単語を調べたりもしたらしいけど、ほんの2〜3行訳すのにものすごく時間がかかって
「こんなことをしてたら留学生活最後までかかっても、この宿題は終わらん!」
と思い、辞書は放棄して、太字などの「大切そうなところ」を丸写しするという方法を取ったんだって。

そうやって丸ごと書き写す(まるでCDを歌うみたいじゃない?)ことを繰り返すうちに、帰国するころには周りのメキシコ人よりも正しくスペルが書けるようになってたらしい。
(頑張れメキシコ人! まぁ日本人も漢字間違えたりするから同じか)


ところでスペイン語には英語と同じようにRとLがあって、その両方が入ってる単語を書くとき、よく迷ってたって言うのよね。

その気持ち、すごくよくわかる。私も英語で聞いたり話したりの時は適当にごまかしていても、書くときには「えっとどっちだっけ?」ってなるもの。
もちろん口に出してみて「こっち」ってわかったときはいいんだけど、そうじゃないときどうしてたか?

その単語の輪郭を思い出してたんだって。
つまり一個一個のアルファベットの並びではなくて、全体像をぼんやり描くわけ。
最初が低くて途中が高くなって、長さはこのくらい みたいな感じで。
そうすると「最初の方がRで途中に突き出たLがある」となるの。

確かに! 私も英語で「リラックス」っていう単語を書くとき、ずっとどっちがどっち?って迷ってたけど、ある時から迷わなくなったんだ。
それは本屋で「relax」と書かれた雑誌を目にするようになってから。
あの雑誌のロゴとともに、私の中にストンと入ってきたんだよね。

もちろん、最初から音と文字がストレートに結びついてたら問題はない。なので音から見つけたことばじゃなくって、外来語として日本語に入ってるものとか、学生時代に単語集・イディオム集なんかで覚えたものがヤヤコシイわけですよ。

自然のプロセスの中では、文字だって全体像を捉えるところからなのです。


さて、次回からはいよいよ関係性や場について考えていきたいと思っています。
ご意見、ご感想などお寄せ下さい。

それではまた次回をお楽しみに、 再見♪