第10回 芋づる式多言語の秘密

オレガンマネヨ〜! Cynthiaです。

前回は、フランスでのホームステイの体験を元に、「ことばというのは、それまでの全人生で理解し話すものなんだ」ということを見つけた話を書きました。


さて今回は、多言語の秘密(!)に初めて近づけた気がしたときのお話。

以前、ロシアにホームステイに行った人の話を聞いて、自分の中のロシア語が「話せることば」に変化した体験を話したよね、覚えてる?(第3回 CDの音が血となり肉となる 参照)
あの頃の話です。


ある朝、ベランダの植物に水をやろうと思ってバケツに水を溜めていたら、突然頭の中に「トラバハンド、トラバハンド」っていう声がした。

「ナンだ?」
と思った瞬間、嬉しそうにロシアホームステイの話をしていたYさんの顔が浮かんできて、夜のワークショップで話していた内容を思い出したんだ。

それは、ロシアでホストが何やら質問をしてくるんだけど、よくわからない。
「お前の「ヨーク」はなんだ?」
と聞かれてることはわかるけど、「ヨーク」の意味がわからなくて困っていたら、英語だという。
英語で「ヨーク」???


すると、ファミリーのお父さんメンバーが、ロシア語のおじいさんの話の最後の最後、盛り上がっていくところを「サラボ〜タ、〜〜〜ジェニ〜」と歌っている場面が、その声とともに思い出されて、「あっ、ラボータ! WORKのことか」と理解できた、という話だった。

それを思い出したとたん、私の中でヨーク、WORK、ラボータ、トラバハンド、という音と、自分のやっているバケツの水汲みという行動が、ピタッと一致したのね。

その間、わずか1秒足らず。


今でこそ、スペイン語がメジャーなうちのファミリーだけど、私はそのころ全くスペイン語なんて話せなかったし、スペイン語圏に限らず受入れも1回もしたこともなかったし、多分スペイン語で歌えたのはタイトル位だったと思う。

だから「トラバハンド、トラバハンド」っていうのは、何となく音は知っていたけど、もちろん意味なんて全然知らないことばだったんだ。

ビックリしたね〜。

だって、私が聞いたのはロシアのホームステイ体験だよ。
それなのに、何でスペイン語がわかっちゃうわけ?


嬉しいよりも、不思議で不思議で、それからしばらく、どうしてそんなことが起こるのかって、そのことばかり考えてた。

以前、日本語で考えたら、その答えが韓国語で浮かんで来たとき(第6回 言語観の転換 参照)にも、ことばって、「音のつながり」と「イメージ(風景とか感情とかも含めて)」が1つになってできてるのかなって思ったんだけど、それがもっとクッキリしてきた感じだった。


でね、あるとき、フッと思ったんだよね。

「ハナ(前にアクセントを置く)」っていうことばを聞いたら、韓国の人は「1」をイメージするだろう、大阪の人は「花」、東京の人はまた違うだろうな、他のことばだったら?
あれ?

脳の中に、日本語を記憶しておく場所、英語の場所、韓国語の場所、フランス語の場所、ってあって、それぞれの音はそこに記憶され、収納されていくって思ってたけど、「ハナ」っていう音は1つで変わりないよな・・・


ことば別に分かれて存在してるんじゃなくって、その音にイメージが重なってるのかな。
反対に、同じようなイメージにくっついてる音(ことば)も重なってるのかな。

まぁ、脳の中がどうなってるのかは、わからないけど、1つのイメージ(バケツの水汲み)からズルズルズルっと、スペイン語もロシア語も英語もくっついて出てきたことは確か。

そのときに私は思ったね。
ロシア語聞いて、スペイン語も育つなんて、こりゃスゴイ!

しかもそのロシア語だって、自分でロシアに行ったわけじゃない。
何となく歌っていたことばが、ロシアにホームステイに行った人の話を聞いて、自分のことばになり、そのロシア語に刺激されてスペイン語も出てくる。

多言語って芋づる式じゃん!

ということは、ことばの数が多いほど、一緒に歌う人が多いほど、体験を聞く人の数が多いほど、この芋づるはアチコチに勝手に伸びていく。

なんて楽なんだろう。



気の向くままに皆でいろんなことばを歌い、仲間のホームステイの体験を楽しく聞いてるだけで、私の脳の中では多言語の芋づるが勝手に育ってくれる。

ヒッポの多言語活動を始めるとき、「いっぺんに7ヵ国語もなんて、無理でしょう」と思っていた。
英語1つでも身につかないのに、7つもやろうなんて何考えてるんだか・・・

しかし、ことばの数はその後どんどん増えて、今では19ヶ国語。20番目のことばも準備中だ。
新しいことばが増えたからといって、2倍、3倍に大変になっているという感じはしない。
むしろ多いほうが、「何かに似ている」ところを見つけやすい。

多言語だから楽なんだよ、という声もよく聞く。


多言語の秘密はまだまだ奥が深くって、私なんてホンのその淵に立ったところかもしれないけど、みんなの体験ももっともっと聞きながら、その秘密をさぐってみたいと思っている。



多言語の秘密、みなさんはどんなことを見つけていますか?

ぜひ、教えてくださいね。
 トーマンナヨ!